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Interview · Vol.02

02

「モノの良さ」だけでは届かない時代に。アパレル・グッズで創る、新たなブランディング戦略。

戸田 尚太郎Sales Promotion / 日本サン石油株式会社
2026.09.12
BrandingGoods & ApparelAmerican VintageTailor Made

「モノも情報もあふれる時代です。製品の良さを訴えるだけでは、そもそも振り向いてもらえない。」

日本サン石油とは

日本サン石油が手がけるのは、自動車用のエンジンオイルと、冷凍機油をはじめとする工業用の油だ。「車のエンジンは、鉄の部品が何万点も組み合わさって動いています。その中で、潤滑油があって初めてエンジンとして機能する。その油を作っている会社です」と戸田氏は説明する。

ルーツはアメリカにある。米国の総合エネルギーメーカーの日本・アジア拠点として1966年に設立され、今年で60周年を迎えた。本国ではNASCARやインディカーといったモータースポーツへ長年にわたり燃料を供給してきた歴史があり、ガソリンスタンドも数多く展開する、国民的な知名度を持つブランドだ。「そのブランド力と製品力を活かし、日本でもローカライズしながら、品質の高い製品をお届けすることをモットーにしています」。

日本国内でも、モータースポーツを愛するファンから根強い支持を集めている。「アメリカのレースシーンでのイメージが強く残っていて、『自分の車に使いたい』とご愛用いただくお客様が多いですね」。ストーリーと背景に紐づくブランド——それが同社の強みになっている。

SUNOCOカラーのインディカー模型
オフィスにあったインディカーの模型

なぜ「グッズ」だったのか

今回のプロジェクトは、アパレルを中心としたグッズ製作。その背景には、消費財メーカーならではの切実な課題があった。

「エンジンオイルと聞いて、具体的にイメージがつく方はどれくらいいるだろう、と。自分の車に何が入っているのか、どんな種類があるのか、性能の違いは何か——ほとんど知られていないのが実情です」。加えて、EVや自動運転の広がりで、車のあり方そのものが変わりつつある。「オイルを交換しようと思ったとき、真っ先に自社を思い浮かべてもらえる存在でなければ、メーカーとしては苦しくなる。10年後、20年後を見据えると、若い世代との接点を今のうちに作らないとまずい、という危機感がありました」。

製品は量販店やカーディーラー、整備工場の店頭に並ぶ。しかし、日常的にユーザーと接点を持てるメディアは持っていない。「しかも、車に入れてしまえば外からは見えない。だからこそ、日常生活の中でブランドを感じられるものが、手に取れる距離にある必要があるのではないか。そう考えて、グッズという手段を選びました」。

アメリカンヴィンテージという、一つの柱。

もうひとつ、社内に横たわる課題があった。ブランドイメージのばらつきだ。

「60年の歴史の中で、お客様も、届ける側の社員も、当社を思い浮かべたときのイメージがばらついていると感じていました。NASCARやインディカーを挙げる人、SUPER GTを挙げる人、『アメリカだよね』と言う人——ルーツの捉え方がまちまちだったんです」。

そこで、共通の柱として据えたのが「アメリカンカルチャー」だった。プロジェクトのテーマは「アメリカンヴィンテージ」。上司を含む営業スタッフ約60名に、なぜグッズを作るのか、誰に届けたいのかを説明していく過程そのものが、社内の意識をそろえるきっかけになった。「代理店様や消費者の方に新商品を説明するとき、『実はアメリカの古き良き時代がテーマで』と一言添えてくれる。そんな動きにもつながりました」。

ヴィンテージのBlue Sunoco給油機
オフィスに佇む、往年の「Blue Sunoco」給油機。アメリカンヴィンテージの世界観を象徴する一台。

「グッズが一つのきっかけになって、対外的にも社内的にも『うちはこういうブランドだ』というアイデンティティを育てられたら嬉しい。」

対外的なプロモーションだけでなく、インナーブランディングとしての効果も生まれている。

SHUTTLE WORKSを選んだ理由

これまで同社のグッズ製作は、ボディの仕入れ先に声をかけ、デザインは社内で、ロゴを大きく配置したシンプルなものが中心だった。しかし今回は勝手が違った。

「若年層に訴求する上で一番のネックは、そもそも当社を知らない人に、どう届けるか。もっと言えば、いかに『格好いい』と思ってもらえるか、でした」。ロゴを置くだけでは足りない。イラスト、フォントの選定、タイポグラフィ——難易度の高いデザインが必要だった。「企画・デザインから素材の選定、製作、納品、そして一貫したクオリティコントロールまで、一気通貫で任せられる会社を探していたんです」。

日本サン石油 戸田氏とSHUTTLE WORKSの対談の様子

そこで縁がつながったのが、SHUTTLE WORKSの遠藤氏だった。遠藤氏はファッション業界に15年以上携わってきた経歴を持つ。「私たちはファッションを軸に、ユニフォームやグッズといった“ものづくりを通じたブランディング”を強みにしています」。単なる製造にとどまらず、「なぜグッズを作るのか」「アパレルか、雑貨か、どんな形なら課題が解決するのか」というコンセプトの部分から伴走する。「広告代理店が担う領域と重なりますが、ファッションを打ち手にブランディングを行う会社は、なかなか他に知りません」と戸田氏は言う。

製作物とこだわり

強く記憶に残っているのは、パーカーの色選びだったという。

「最初は白で考えていたんです。でも遠藤さんが、『古着でこのデザインなら、グレーがいい』と推してくれた。些細なことかもしれませんが、すごく腑に落ちて」。実際に販売してみると、「グレーがいい」と言うお客様が何人もいた。「ファッションを極めてきたワークスさんだからこそのアドバイスを、たくさんいただけました」。

SUNOCO パーカー(グレー)全景
SUNOCO パーカー フロントプリント

Hoodie 当初の「白」から、遠藤氏の提案で「グレー」へ。ヴィンテージのマッスルカーをあしらったフロントプリント。

アイテムそのものの提案も印象的だった。「このボディに刺繍を入れたら絶対に映える、と言い切ってもらえたのは初めてでした。これまで多くの仕入れ先と仕事をしてきましたが、プロダクトの背景まで添えて『このアイテムがいい』と提案されたことはなかった」。

SUNOCO SPECIAL OIL Tシャツ 全景
SUNOCO SPECIAL OIL Tシャツ プリント

Special Oil Tee SUNOCOの日本拠点設立の1966年にちなみ、アメリカの60年代にフォーカスした、ヴィンテージポップをテーマにしたオリジナルイラスト。

第1弾はTシャツ。創立にちなむ1960年代の古着ヴィンテージのムードをまとい、架空の女性をモチーフにデザインした一着だ。タイポグラフィひとつをとっても、歴史やファッションのテイストに紐づいて語れる——そんな厚みのあるものづくりになった。

SUNOCO コーチジャケット 全景
SUNOCO コーチジャケット 胸ロゴ
SUNOCO コーチジャケット バックプリント

Coach Jacket ガソリンスタンドのノズルを、アメリカのストリートカルチャーに合うデザインへ落とし込んだ一着。
SUNOCO Tシャツ バックプリント
SUNOCO Tシャツ 胸ロゴ
SUNOCO Tシャツ バックプリント(アップ)

Motor Oil Tee 昔のアメリカの看板などに用いられる飾りフォントを使い、ヴィンテージ感とSUNOCOブランドを馴染ませたデザイン。
SUNOCO Tシャツ(ブラック)バックプリント
SUNOCO Tシャツ(ブラック)バックプリント(アップ)

Company Tee オイルをイメージしたモコモコとしたフォントを使用。アメリカの昔の企業Tシャツをイメージした一着。
SUNOCO ロングスリーブTシャツ フロント
SUNOCO ロングスリーブTシャツ バックプリント(SUNOCO Racing)
SUNOCO ロングスリーブTシャツ 全体
Racing Tee レーシングチームのTシャツに見られるデザインを踏襲。SUNOCOの象徴であるモータースポーツから想起したデザイン。
SUNOCO キャップ
SUNOCO Cap シンプルに“SUNOCO”ロゴを配置。柔らかさのあるフォントと抜け感のある配置で、SUNOCO社をあえて馴染ませた。どこにでもありそうで、「あえて」SUNOCOを選ぶことに意味があるデザイン。
SUNOCO スタッキングマグ(BE SAFE, CHECK THE OIL)
SUNOCO スタッキングマグ(MOTOR OIL)
Stacking Mug アメリカのヴィンテージ雑貨でよく見かけるスタッキングマグに、アーカイブ資料から着想を得てデザインしたイラストをプリント。

最後に

最後に、戸田氏は同じ悩みを抱える担当者へのメッセージを語ってくれた。

「私たちのような消費財メーカーは、差別化に苦戦している担当者が多いと思います。アパレルやグッズは打ち手として思いつくけれど、『何をすればいいかわからない』『いいデザインにしたいのに、言語化できない』。その入り口から支えてくれる会社は、なかなかありません」。広告代理店は広告のプロだが、アパレルとなればファッションの知識と経験が要る。「後から『ありもののボディにデザインを載せただけ』に見えるかもしれない。でも実際は、素材選びからデザインコンセプト、配色、レイアウトまで、すべてが違うんです」。

社内を動かす効果も大きかったという。「予算の承認を取るときも、周りのスタッフを巻き込んで納得してもらわないと、仕事は形になりません。『こういう思いで作っている』と添えるだけで、『こだわってるんだね』と感じてもらえる。社内の業務がスムーズになり、従業員のブランド意識も高まる。そんな副次的な効果も生まれました」。

遠藤氏も、こう締めくくる。「AIが標準になり、モノの価値だけで差別化するのが難しい時代です。だからこそ、あらゆるビジネスでブランディングが重要になる。サン石油さんの歴史や戸田さんの考え方に強く共感しながら作らせていただきました」。

「オイルは、そもそも日常で意識される商材ではありません。だからこそ、グッズを入り口に『これは何だろう』と興味を持ってもらう。新しいお客様を育てる導線として、この戦略は大きな意味を持つはずです。」

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